CAT TOPICS
1年音楽ビジネスコース 音楽ライターゼミ<インタビュー実習>
【音楽ライターゼミ】の講師、エイミー野中です。【音楽ライターゼミ】では1年生前期のカリキュラムでアーティスト紹介とインタビュー実習を学びます。
その授業の一環として、大阪を拠点に活動するバンド、【ネオンに恋して】のドラムを担当する増田遥さん(キャットミュージックカレッジ専門学校卒業生)にインタビューしました。
今回はそのインタビュー実習(*8月22日)の模様を紹介します。
前半は講師の方から【ネオンに恋して】が結成されるまでの経緯や現状、シティポップや歌謡曲などの影響を感じる“ネオレトロ”というコンセプトについて質問しました。そして、後半は増田さんご自身のことにフォーカスを当てて学生が質問していくという構成です。
増田さんはドラムを始めたきっかけから音楽活動の姿勢、スランプの脱出方法など、ひとつひとつの質問に対して笑いを交えつつ、熱心にお話ししてくださいました。
――【ネオンに恋して】はしっぽさんと竜斗さんの男女ツインボーカルのバンドですね。2023年の春から活動を開始して1年余りとなります。振り返ってみていかがですか。
増田「ツインボーカルというのが特殊で、バンドとして2人のボーカルをどうやって立てるかみたいなところをすごく考えて試行錯誤してきました。いつもライブを見てくれる方とか、お世話になってるライブハウスの人とか、いろんな方の意見を吸収しつつ、自分たちで出せるものを出していこうと思ってがんばっています」
――“ネオレトロ”というテーマはどのように生まれたのですか。
増田「発案者はしっぽです。時代によって音楽の流行り廃りがあると思いますが、自分たちの親が聴いてきた時代の曲を改めて聞いてみると、やっぱかっこいいなと感じます。昔の要素と今の要素を合わせることで、若い世代にはなんか新しいって思ってもらえて、昔の曲を聴いてこられた方々には、どこか懐かしいけど今の時代にも合ってるなと感じてもらえるようなバンドにしたいなと。そういう思いで【ネオンに恋して】の曲を作っています」
――増田さんが【ネオンに恋して】のメンバーになった経緯というのは?
増田「以前、ギターのzumaと女性ボーカルのしっぽが、【ラパンテット】というバンドをしてまして。そのバンドが解散した後に、二人が中心となって結成したのが【ネオンに恋して】なんです。【ラパンテット】の初期に私が少しだけサポートをさせていただいたことがあったので、そのご縁で【ネオンに恋して】のメンバーとして誘っていただきました。私はしっぽの歌もzumaのギターも大好きでしたし、めちゃくちゃ嬉しかったです」
――【ネオンに恋して】のドラムではどういうことを意識していますか。
増田「リズムだけじゃなくて、抑揚もそうだし、その曲に一番合うドラムを叩けるように毎日そのことばかり考えてます。【ネオンに恋して】では歌を響かせるというのが1番大事なことだと思ってます。ドラムって曲の流れを作る楽器なので、綺麗な流れで、歌が一番響くドラムが叩けるようにレコーディング当日ギリギリまで考えてます。9月に新しい曲が出るんですけど、その時はレコーディング前日の朝4時ぐらいまで自宅の電子ドラムで録音して聴いてという作業を繰り返ししていました」
――ドラム以外のことで、バンド内での増田さん役割というのは何かありますか。
増田「マスコットかな(笑)。スタジオ内で空気が重くなったりした時はとりあえずふざけてみる(笑)。私もメンバーも動物が好きなんで、インスタで流れてくる動物の動画を見せたりして、空気を和ませたりしてます。あと、バンド内で“To Do リスト”を書く時に、なんかせなあかん!ってなったらみんながしんどくなるから、あえてふざけて書くようにしたりしてます。“お主の仕事じゃぞ”みたいな感じで(笑)」
――増田さん自身が疲れが溜まったときはどんなふうに癒してますか。
増田「私、ウサギと暮らしるので、ウサギを撫でたり、ケージの中に頭突っ込んだりしてますね(笑)」
――ありがとうございます。ではここからは音楽ライターゼミ1年生の学生から質問させていただきます。
片山「増田さんがドラムを始めたきっかけを教えていただきたいです」
増田「ドラムを始めたきっかけを話すとちょっと暗くなるんですが、中学、高校の時はこんな明るくなくて(笑)。なかなか人と馴染めないような閉じこもりがちな性格やったんです。中学生の時は剣道部だったので、当時は音楽には全く興味なかったんですけど、中二の頃に関ジャニ∞(現・SUPER EIGHT)を見てバンドに興味が湧いてから世界が広がりました。その時、ドラムが1番かっこええなって思って。ドラムがやりたいと母に言ったら、剣道をやりきってからにしなさい!って怒られたんです。それで、中学時代は剣道に専念して剣道二段を取りました。その後、軽音部がある高校に進学してからドラムを始めたんです。なので、ドラムをやりたいと思ったきっかけは関ジャニ∞(現・SUPER EIGHT)ですね」
佐保「増田さんはイスタンブール・アゴップ社(*シンバル発祥の地であるトルコのシンバル製造会社) とエンドーサ契約されているそうですが、どういった経緯で契約されたのですか」
増田「ドラマーってバンドだけで生きていく人と、ドラマ ーいち個人としていろんな楽曲に関わる人がいると思います。私の中では、ひとつのバンドにとどまらず、 バンドのためにも自分の成長のためにも、私個人がちゃんとドラマーとして認知してもらえるように活動したいという思いがあって。私個人のアーティスト写真をミヤタケヨシノブさんという写真家に撮ってもらったんです。その写真を梅田のMIKI DRUM CENTERの店長上原さんがすごく気に入ってくれたんですよ。それで、挨拶しに行った時に、“どこのシンバルを使われてますか?”って聞かれて。キャットで出会った友達に薦めてもらったトルコのイスタンブールっていうシンバルが好きで一式持ってるんですって話をしたんです。すると、“今ちょうどイスタンブールのエンドーサを探してるから、そのイスタンブールの人が見にくるドラマーのコンテストに出てみないか”と言われまして。そのコンテストに出たことがきっかけで契約してもらえたんです。それで今、スティックとシンバルメーカーで契約させていただいます」
宮本「僕もドラムをやっていますが、ライブをする時に緊張します。増田さんはドラムを叩くとき、緊張しないようにどうやって気持ちを作っていますか」
増田「私も緊張するんですよ。いまだに手が震えたりするんですけど、 そういう時はメンバーの顔を見ますね。あと、意識を遠くに飛ばすようにしています。例えば江坂ミューズでライブをする時は、江坂ミューズの中にいる人たちだけじゃなくて、自分を好きでいてくれるひととか、【ネオンに恋して】のバンドを好きでいてくれる人、サブスクで聴いてくれてるような人たちのことも思い浮かべて、(そこまで)届け!って思ってやると、緊張より届かしたいって気持ちの方が大きくなるから、それで笑顔になります。緊張しないようにしようという意識より、自分のドラムの音を届けたい!っていう気持ちを前に出すようにすると、ちょっとマシになるかもしれないです。私は今、ドラムを俯瞰的に見たくてベースを習ってるんですよ。その先生が、“パワーは飛んでいくものやから、ここにとどまったらあかん”と教えてくれました。“演奏している場所から音は突き抜けて飛ばすよ!ぐらいの気持ちでやったら絶対届くから”って言ってくれたのがめっちゃ腑に落ちたんで、 そこは大事にしてます」
辻「少し音楽の話からそれてしまいますが、音楽活動をしてなかったら何になってましたか」
増田「これめっちゃ面白い質問ですね、ありがとう! 実は小さい頃、お医者さんになりたかったんです。幼稚園の時に小児癌(白血病)になって。背中に注射されたり、痛い思いをいっぱいしてきたんですが、こうして今生きているのは看護師さんやお医者さんに助けられたから。それで、私も人を助けないと!って思って、お医者さんになりたい時期があったんです。頑張って小学生の時に塾にも通いましたが、私には勉強は難しくて無理でした(苦笑)。でも、医者にはなれなかったけど、どうすれば人の役に立てるのか、どうしたら人を助けられるんやろう?って考えたことが、今、音楽をやる上で大きかったかもしれないですね」
多田「私は人前で話す時とか、初対面の人と話す時にめっちゃ緊張して、言いたいことがうまく伝えられなかったなと思うことがあります。初対面の人と話す時に気を付けてることはありますか」
増田「私も中学高校の頃は初対面の人に自分から話しかけに行くなんて絶対無理やったんです。こう思われたらどうしよう…とか、勝手に想像してけっこう考えるタイプなんやけど。(愛の)告白と一緒で、“好きです”て言って、“無理です”って言われたら、もうしゃあないなと。そんなふうに思えるようになったきっかけはCATに入ったことがけっこう大きかったかもしれませんね。自分と違う専攻の人と関われるのって、今しかないなと思って、とりあえず輪の中に入るようになって。その場にいる環境に慣れさせるみたいなことは意識はしてました。変に相手を怖がらないようにして、初対面の人と話すときは身構えないようにしようと。その人の素敵なところって絶対にあるから、とりあえず私はこういう人間ですということを臆せずに出してみたらいいかもしれませんね」
水田「私は中学、高校で吹奏楽だったので楽器に触れてきましたが、スランプになるとどう頑張っても抜け出せなくて。他の人に追い越されていくという悪循環がずっと続いてしまうことがありました。増田さんはドラムでスランプにハマった時、どうやって抜け出していますか」
増田「私、ドラムを初めてから、今でも毎日スランプなんです。何回やめてやろうかって思ったか…。CAT時代もすごくレベルが高い同級生がいっぱいおったんです。今も私より若い子たちが、どんどんメジャーデビューとかしていく時に、悔しいな…って思ってスランプになりますけど、最近見出した苦境からの脱出方法は好きなアニメを見ること(笑)。私は『ハイキュー!!』が好きなので、それを見て自分を奮い立たせてます。 あと、自分が好きでやってきたことの原点を見るのは結構大事かな。なんでこれを好きになったのか再確認する意味で。人と比べてるから、スランプに陥って狭い世界しか見えなくなってるから。そうじゃなくて、 私はなんでこれを始めたんやったっけっていうところに戻ってみると、また世界が開けてくるんじゃないかな」
須佐美「1番最初に好きになったアーティストは誰ですか」
増田「さっき話した関ジャニ∞(現・SUPER EIGHT)の次にめちゃくちゃハマったのはBUMP OF CHIKEN。今もツアーを全国回りたいぐらいに好きです。特に歌詞に惹かれました。悲しい時でも、前を向きたい時でも、 むちゃくちゃ嬉しい時でも、どの感情にも当てはまるのがBUMP OF CHIKENの歌詞なんです。一曲あげるとしたら『流星群』です。ちょっとマイナーな曲なんですけど、 最後のほうの歌詞を聴いてくれたら、みんなにもたぶん刺さると思います。それをライブでやってくれた日は、もうあと10年は生きられます!っていう曲です」
山本「音楽の話とは関係ないのですが、バイトで失敗して落ち込んだときに気持ち上げる方法があれば教えてほしいです」
増田「日々落ち込むことありますよね。でも、たとえどんな日でも1回くらいは“これができたな”っていうことがあると思うんですよ。“今日は遅刻せずに授業に来れた”――でもいいと思うし、そういうことを1行だけ書いていくノートがあったらいいなって思ってて。良かったことを忘れないように。何かで落ち込んだ日にそれを読み返してみると元気出るんじゃないかな。私は、【note】っていう媒体でそういうことを文章にして書いてます。 嫌なことや悪かったことばっかり頭に残りがちだけど、それをかき消してくれるのが楽しかったこととか、 今日できたこと、よかったなって思うことだから。今日カブトムシ見つけたとか、そんなちっちゃなことでいいやん。一行なら、そんな時間かからへんはずやから。それを365日書いてみる。そういうのもありなんかなって思ったりします」
今回のインタビューを通して、【ネオンに恋して】というバンドに対する興味をより深め、増田さん自身のドラマーとしての情熱や明るくてフランクな人間性にもとても引き込まれました!
音楽ビジネスコース1年生は、これから始まる後期以降も学内のイベントなどで来校するアーティストにインタビューする機会があると思います。
今回の実習を今後のインタビューにもぜひ活かしてほしいと思います!
【音楽ライターゼミ】講師:エイミー野中